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諭旨解雇とは?懲戒解雇とは違う?処分の重さや失業保険などへの影響を解説

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この記事のまとめ

  • 諭旨解雇とは、懲戒解雇に該当するが企業の厚意で緩和した処分のこと
  • 諭旨解雇は従業員が納得したうえで退職届を提出するので、懲戒解雇とは異なる
  • 諭旨解雇は、企業における処分のなかでも2番目に重い
  • 諭旨解雇となっても失業保険の受給は可能だが、退職金を受給できるかは企業による
  • 諭旨解雇後の転職では、経歴詐称にならないように注意する必要がある

「諭旨解雇って何?」「懲戒解雇とは違うの?」と疑問を持つ方もいるかもしれません。諭旨解雇の概要や与える影響が分からないと、再就職できるのか不安になりますよね。

諭旨解雇とは、懲戒解雇相当の違反を行った従業員に対して企業側の厚意によって減刑された処分です。就業規則に何度も違反した場合などに下されるのが諭旨解雇ですが、企業側と従業員共に納得したうえで退職届を提出して、解雇手続きを行うので懲戒解雇とは異なるでしょう。

このコラムでは、キャリアアドバイザーの八木さんのアドバイスを交えながら、諭旨解雇とはどのようなものを解説しています。また、処分の重さや失業保険・退職金への影響もご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

諭旨解雇(ゆしかいこ)とは?

諭旨解雇とは、企業が解雇相当の違反行為をした従業員に対して行う解雇処分の一種です。諭旨解雇は企業側から労働者へ向けて退職を促し、労働者側がそれに応じて退職届を提出後に解雇処分とする処置となります。

そのため、諭旨解雇を行うには双方の同意が必要となり、従業員が拒否した場合、企業側は懲戒解雇することが可能。本来であれば懲戒解雇に相当する違反でも、違反した従業員の今までの働きや反省の姿を見て、企業側の配慮で緩和した形といえるでしょう。

ハタラクティブ プラス在籍アドバイザーからのアドバイス

八木寛斗

八木寛斗

「諭旨解雇(ゆしかいこ)」とは、労働者に対して退職を勧告する懲戒処分です。多くの企業では、諭旨解雇が懲戒解雇に次いで2番目に重い懲戒処分とされています。強制的に労働契約を終了させる懲戒解雇とは異なり、諭旨解雇は労働者の自発的な退職を促すものです。

また、退職を拒否すれば懲戒解雇が行われる場合が多いため、事実上強制的な処分に近い側面があります。「諭旨解雇」が行われるのは以下のような場合です。
・ハラスメント行為(セクハラ・パワハラなど)
・長期無断欠勤
・業務違反命令
・経歴詐称 など 「諭旨解雇」であることを転職活動時の履歴書や面接で申告する必要はありません。ただし、刑事罰を受けたことが原因で「諭旨解雇」になった場合は、履歴書の賞罰欄で申告していないと「告知義務違反」とみなされる恐れがあるので注意しましょう。

諭旨解雇になる事例

諭旨解雇になる事例には、「度重なる就業規則に違反した行為をした」「モラハラやセクハラなどのハラスメント行為を重ねて行った」などが挙げられます。ただし、事例は企業によって異なる場合があるので、「何をしたら諭旨解雇される可能性があるのか」と知りたい場合、勤務先の就業規則に定められている内容に違反しているかどうかが判断基準となることを留意しておきましょう。

諭旨解雇までの流れ

いきなり諭旨解雇を促すことは懲戒権の濫用とみなされるため、企業側も慎重に処理を進めていくことが一般的です。以下で、諭旨解雇までの流れを解説するので、チェックしてみてください。

1.調査

まず第一に諭旨解雇となる原因の調査が行われます。社会の一般的な常識に反しているかよりも、「どのような状況で就業規則に違反した行為をしたか」を元に調査されることが一般的です。調査が曖昧なまま誤って諭旨解雇を通達してしまうのを避けるために、慎重に情報の精査が行われます。

2.検討

調査が行われたあとは、処分内容を検討します。規則に違反している場合、懲戒解雇になるのが基本。ただし、「本人がどれほど反省しているか」「諭旨解雇に値するか」も判断されるでしょう。

3.弁明

調査や検討を踏まえたうえで、事実と誤りがないと判断された場合は、次に本人からの弁明の機会が設けられます。本人に対して直接、どのような状況だったのか、反省の意思はあるのかなどの聞き取りが行われるのが一般的。この機会が設けられることで不当解雇にあたらないように配慮し、弁明内容から再調査が行われる可能性もあります

4.処分の決定

これまでの調査や弁明、再調査などの段階を踏まえたうえで会社側で処分の決定が行われます。本人の姿勢や問題の重大さ、企業に与えた損害などさまざまな要因が検討され、諭旨解雇となるか、懲戒解雇となるか最終的な判断が下されるでしょう。

5.懲戒処分通知書の交付

諭旨解雇が決定すると、懲戒処分通知書が作成され対象の従業員に交付されます。懲戒処分通知書には、諭旨解雇処分になる事実と諭旨解雇処分と判断した理由が記載されています。

また、諭旨解雇は労働者側から退職届を提出してもらう必要があるため、通知書には退職届を提出する期限も記載されていることが一般的。ほかにも、退職金などに関する情報も記載されてある場合があるでしょう。「退職金は勤続何年目から支給される?制度の概要やもらえる金額を知ろう!」もコラムでは、退職金は何年勤務したら受け取れるのかを解説しているので気になる方はチェックしてみてください。

諭旨解雇と懲戒解雇の違い

厚生労働省による「モデル就業規則について」によれば、重大なハラスメント行為や法律違反行為が発覚した場合に懲戒解雇になります。諭旨解雇は双方合意の元の解雇となりますが、懲戒解雇は一方的な解雇であることが大きな違いといえるでしょう。

また、「労働契約法第十五条」によれば、懲戒解雇とする場合は主観的ではなく客観的かつ合理的な理由、そして社会通念上の相当性が必要です。さらには、法律に反する行為やハラスメント行為、自身の経歴詐称なども懲戒解雇の対象になることも。懲戒解雇の処分を受けると再就職などにも影響が出る場合があるので注意しましょう。

参照元
厚生労働省
モデル就業規則について
e-gov法令検索
労働契約法

諭旨解雇以外の解雇にはどのような種類がある?

諭旨解雇や懲戒解雇以外にも、代表的な解雇処分として「普通解雇」と「整理解雇」があります。普通解雇は労働者の能力不足などの理由によって下される解雇処分で、退職日の30日以上前に解雇通知を行うことが法律で定められています。

整理解雇は会社側の業績不振などの理由によって行われる解雇で、いわゆるリストラとも呼ばれる解雇の種類となります。労働者側に重大な問題がある訳ではなく、会社側の人員コストの縮小などの理由から行われる解雇であり、労働者側への説明が必要となるでしょう。整理解雇で退職する場合は、「会社都合退職」となり退職金が増額される場合もあります。

諭旨解雇と諭旨退職の違い

諭旨解雇と諭旨退職は、処分の重さと退職までの手続きまでの流れが異なります。処分の重さとしては、諭旨退職よりも諭旨解雇のほうが重い処分です。

諭旨解雇は、企業側が労働者に退職届の提出を求めたうえで解雇の手続きを行うのが基本。一方、諭旨退職は労働者自ら退職届を提出したあとは、通常の退職手続きとなるでしょう。どちらも退職届を提出するのは同じですが、「解雇」と「退職」ではその後の転職活動への影響度も異なるでしょう。

諭旨解雇と自己都合退職の違い

諭旨解雇と自己都合退職の違いとしては、諭旨解雇は企業側から退職を促される形の解雇なのに対し、自己都合退職は自発的に退職届を提出する退職であるという点です。どちらも退職届を提出しますが、諭旨解雇はいわば違反的な行動を起こしたあとの解雇処分であり、自己都合退職は家庭の都合や転職など労働者自身が能動的に退職へ向けて動くのも違いといえるでしょう。

自己都合で退職するときに受け取れる失業保険の給付日数や支給額は、「失業保険を自己都合退職後にもらうには?給付制限期間や計算方法を解説!」のコラムで解説しているので参考にしてみてください。

諭旨解雇はどのくらい重い?処分における7つの段階

諭旨解雇は処分のなかでも、2番目に重いものとなっています。以下で、処分が軽いものから段階ごとに解説するので、チェックしてみてください。

1.戒告(かいこく)

戒告とは、労働者の失態や過失などに対して口頭や書面で注意する最も軽い処分です。戒告によって、給与や雇用形態などに影響が出ることはありません。

2.譴責(けんせき)

譴責とは、始末書の提出が求められる戒告よりも重い処分です。始末書を提出させることで労働者自身が起こしてしまった問題の重さを自覚させて改善を促したり、同じ問題を起こさないよう約束させたりすることもあります。

3.減給

減給とはその名称の通り、給与が減額となる処分です。減給となる額については労働基準法によって定められている金額以上の減額がされることはありません。減給は条件付きや期限付きで言い渡される場合もありますが、無期限となると生活に影響を及ぼす可能性がある処分なので注意しましょう。

4.出勤停止

出勤停止は、定められた期間での出勤ができなくなる処分です。出勤停止とされている期間は給与が支払われなくなるため、生活に影響が出ることもあるでしょう。企業によっては、懲戒休職や停職、自宅謹慎などと呼ばれることもあります。

5.降格

降格では現在のポジションから下の地位へとなる処分です。どの程度までの降格となるかは、降格となる事由や企業の判断によって異なるでしょう。地位が下がるため給与の減額はもちろん、自身のキャリア形成にも影響が出る可能性があります。

6.諭旨解雇

降格の次に重い処分が、諭旨解雇になります。諭旨解雇は前述でも説明したように、従業員が懲戒解雇相当の就業規則違反行為を行ったものの、会社の厚意で退職届の提出を促して解雇手続きを行うものです。

双方合意のもとでの解雇・退職となる処分のため、不当解雇に当たる場合などはきちんと説明・弁明を行いましょう。不当解雇になったときの対処法は、「仕事をクビになったらどうする?解雇される理由や不当解雇の対処法を解説」のコラムで解説しているので参考にしてみてください。

7.懲戒解雇

懲戒解雇は最も重い処分となっています。労働者が就業規則に違反する行為や法律に反する行為、ほかの労働者へ多大なる影響が出る行為などを行っている場合、企業側は労働者へ解雇を通達することが可能です。

懲戒解雇の通達には労働者の合意は必要ありません。また、退職証明書等の資料にも懲戒解雇の事実が情報として記載されるため、再就職にも影響を及ぼす可能性もあります。諭旨解雇と同様に、懲戒解雇の場合でも不当解雇にあたる場合もあるので、無実であればしっかりと説明するようにしましょう。

諭旨解雇されたときの失業保険や退職金に与える影響

ここでは、諭旨解雇されたときに失業保険や退職金に与える影響をそれぞれ解説します。以下をチェックし、解雇されたあとの転職活動に役立ててみてください。

失業保険の場合

諭旨解雇処分を受けたとしても、失業保険を受給することは可能です。諭旨解雇は自己都合退職と同じ扱いとなります。ただし、自己都合退職後に失業保険を受け取る場合、支給開始まで2ヶ月の給付制限期間と7日間の待機期間が設けられるため注意しましょう。

失業保険を受給するための手続き方法は「退職後にハローワークで行う手続きって何?失業保険の受給条件や手順を解説」のコラムで解説しているので、チェックしてみてください。

退職金の場合

諭旨解雇を受けた際に退職金がもらえるかどうかは、企業によって異なります。懲戒解雇は退職金を受け取れませんが、諭旨解雇であれば退職金が用意されている場合もあるでしょう。

ただし、通常の退職金の額よりも減額されている可能性もあります。満額支給か減額支給かどうかも企業によってさまざまなので就業規則を確認してみると良いかもしれません。

諭旨解雇は退職後の再就職に影響する?

諭旨解雇は退職後の再就職に影響する可能性は低いでしょう。転職活動に取り組むうえで、応募先企業に諭旨解雇の処分を受けたことを伝える義務はありません。

ただし、面接で退職理由を聞かれた際に嘘をつくと、経歴詐称の扱いとなる可能性があるので注意しましょう。また、法律違反による諭旨解雇の際には、履歴書の賞罰欄での記入を行わなければ告知義務違反の扱いとなることもあります。

そのため、諭旨解雇の事実を自ら開示する必要はありませんが、嘘をついたり、故意に隠ぺいしたりしないほうが良いでしょう。経歴詐称のリスクは「経歴や職歴詐称はバレない?リスクと嘘なく就活を成功させる方法」のコラムで解説しているので、チェックしてみてください。

諭旨解雇後の転職活動が不安ならプロに相談しよう

諭旨解雇後に一人で転職活動を行うことに不安を感じる方は、就職・転職エージェントのプロに相談するのがおすすめです。不安を抱えたまま転職活動に臨むと、自信のなさが面接官に伝わり「頼りない」とマイナスイメージを与えて内定が遠ざかる可能性があるでしょう。プロのキャリアアドバイザーから仕事の提案や転職活動のアドバイスをしてもらえれば、前向きに取り組めるうえにミスマッチも防げます。

「諭旨解雇処分を受けたら転職できるの?」「クビになるかもしれない」と不安な気持ちを抱えている方は、就職・転職エージェントのハタラクティブへご相談ください。ハタラクティブは若年層に特化した就職・転職エージェントです。

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後藤祐介

監修者:後藤祐介

京都大学工学部建築学科を2010年の3月に卒業し、株式会社大林組に技術者として新卒で入社。その後2012年よりレバレジーズ株式会社に入社。
ハタラクティブのキャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーを経て2019年より事業責任者を務める。

資格 : 国家資格キャリアコンサルタント国家資格中小企業診断士
メディア掲載実績 : 「働く」をmustではなくwantに。建設業界の担い手を育て、未来を共創するパートナー対談定時制高校で就活講演 高卒者の職場定着率向上へ【イベント開催レポート】ワークリア障がい者雇用セミナーSNS : LinkedIn®YouTube